対話で紡ぐコミュニティの創造ーSNSの広がりの中でーをテーマに9月27日から3日間、山口県山口市で開かれた第43回日本人間性心理学会。日本にフォーカシングを紹介した村山正治さん(九州大・東亜大名誉教授、90歳)が「人類の大転換期に私はどう生きるか」と題して講演しました。大会準備委員会の企画です。
村山さんは、ロジャーズとジェンドリンの実践と思想から大きな影響を受けています。ロジャーズは紛争解決にエンカウンターグループを活用し、1987年ノーベル平和賞候補になりました。ジェンドリンも、「チェンジズ」と呼ぶ、互いにフォーカシングと傾聴をするグループを提唱しました。「心理臨床の問題を個人に還元せず、社会の変数である」とみます。このグループは、世界に広まり、札幌フォーカシングプロジェクト(SFP)もその一つです。
村山さんは、ロジャーズの「静かな革命」を「1人1人のあり方が大事にされて、相互理解でつながっていくこと。そんな生き方をしたい」と熱く語りました。その例として、決められた日時だけ集まる時間コミュニティの「福岡人間関係研究会(福人研)」と、事例提供者を大切にした事例検討法(PCAJIP)を取り上げました。
福人研から生まれた人間関係を①楽に自然に呼吸できる②自分の悪いところだけでなく、良いところも感じとれる③困った時に他人に頼ることを自分に許せるーと説明しました。
また、セラピーや人間関係の中で「政治」はだれが権力を持つかにあり、当事者が評価し、自分を理解し、選択できる、いわば「政治」を自分自身に適用することが大事であるとしました。
今学会では、SFPの小坂淑子さんが、アーツをジェンドリンのTAE(エッジで考える)に取り入れた試みを口頭発表しました。
近年札幌でのワークショップに招いた講師の中では、岡村心平さんが生成AI時代のフォーカシング実践の未来像を探る発表をしました。フロアとの質疑も活発で、「私たちの人生は1回しかない。聴き手のAIから何億回のデータをつきつけられても、おまえ本当にわかっているのかと…」「『私は生きている人間としてこう感じます』と言えるのが機械にできない人間の仕事」などの発言がありました。
酒井久実代さんは、インタラクティブ・フォーカシングを取りいれたカウンセリングが感情状態に及ぼす効果。星加博之さんは「フォーカサーとポリフォセンス(多様な思い)との対話」について口頭発表しました。
もう一つの大会準備委企画で「発達障害の謎」と題した講演については、以下のリンクに載せました。
発達障害の謎ー人間性心理学会講演 | フォーカシングin北海道 (kamimurahideki.net)
写真は山口県萩市の旧城下町にある菊屋家住宅。世界遺産「明治日本の産業革命遺産」で、「全国最古に属する町家」として国の重要文化財。