ワークショップ(WS)

「聴く」を見直そう:
フォーカシングで「傾聴」スキルを深めてみませんか?

 「傾聴」はさまざまな心理療法でも、ビジネス場面や日常生活でもとても大切と言われています。今回のワークショップでは、今持っている「傾聴」スキルを、もう一段階ブラッシュアップ(磨きをかける)していただけるよう「フォーカシング」を活用した傾聴練習をします。

〇日時:2025年1月11日(土)12日(日)いずれも午前10時~午後5時、札幌市社会福祉総合センター
〇ワークショップの内容
 
 ■1日目「フォーカシングを活用した傾聴ワーク」(主担当:フォーカシングトレーナー 榊原佐和子)
 フォーカシングのデモンストレーションを「聞き手」「話し手」が何をしているのかという解説を入れながら、行います。その中で、傾聴のコツをつかんでいただけたらと思います。

 ■2日目「非言語の表現を見る・聴く・感じる」(主担当:同 小坂淑子)
 人の話を聴いている時に出てくるフェルトセンスに気づき、活かす感覚を得られるか試してみましょう。その後、表現アーツの技法を用いて、フェルトセンスを動き・音・イメージ描画などに表現します。聴き手は、非言語の表現をどうやって一緒に見て、聴いていったらいいのかを学びます。

〇こんな方におすすめです。
・フォーカシングをもっとうまくなりたい方
・普段はフォーカシング以外の心理療法を行っているが、傾聴スキルを向上させてその効果をより高めたい方
・すでに「傾聴」を学んだことはあるが、もっと深めたいと考えている方
・「傾聴」を学んだことはないが、興味がある方
*フォーカシング経験のない方でもご参加いただけます。
〇申し込みは、以下のフォームから ↓→https://forms.gle/BXyEstrzomEodaaaA
〇募集のチラシは以下からダウンロードできます。

池見陽さんのワークショップ

“iFocusing” への誘い:

関西大教授、池見陽さん=写真=のワークショップ「iFocusingへの誘い」が7月20日に北大学術交流会館、21日に道民活動センターかでる27で開かれました。

 34人が参加。初日はジェンドリン哲学とフォーカシングについて学びました。池見さんはフェルトセンス=感じられた意味感覚について、「私達の体験は言葉で構成されていない。しかし、それを直接参照することはできる」と話しました。例として、夜になると「あの感じ」がやってくる、と言った時の「あの感じ」は、言葉や概念を介さずして参照できることを挙げました。
 言葉の奥には暗に感じられた意味があります。それがフェルトセンスです。
 フォーカシングはカウンセリングで成功するクライエントが行っている重要な内的行為です。フェルトセンスと一緒にいる時間をとることとも言えます。池見さんはこれをフォーカシングα(アルファ)と名付けました。この行為を人に教えるために作られた技法(スキル、教示法)をフォーカシングβ(ベータ)と区別しました。
 αのワークとして、最近の生きざまを動物にたとえて言い表すアニクロをやってみました。Bとして、ジェンドリンのショートフォーム(フォーカシング簡便法)について説明し、参加者の一人を相手にデモンストレーションしました。
 ジェンドリンはセラピーでは「関係」が第1に重要。リスニングが2番目、フォーカシングの教示(β)は3番目でしかないと書いています。関係とは、相手の内側に生きられた実態(瞳の奥の存在)との関係です。それと深い関係をつくるには、自らと相手のフェルトセンスにフォーカシングをしながら聞くことになります。結局、フォーカシングが一番大事という理解になります。
 2日目は、ショートフォームを参加者がペアで体験。池見さんは、カール・ロジャーズの中核3条件について解説し、ロジャーズの実際の応答を紹介しました。ロジャーズが「私は『感情の反射』などしていない。相手に対しする私の理解を確かめているのだ(0987年)」としているのを基に、池見さんは、セラピストにとって、相手を正確に理解してみようとする「理解の試み(TU)」の練習を開発しました。話し手が12分間話している間、聞き手は話の追体験に集中し、質問しない。その後、8分間、「私はあなたの話を〇〇のように理解していますが、合っていますか?」か、「私はあなたの話を聞いて〇〇のように感じています」という応答を基本にします。
 これも参加者がやってみて好評でした。
 さらに、池見さんは2022年に発表した「体験過程モデル」を解説しました。①人には「無意識」や「本当の自己」「真の性格」といったコンテンツ(内容)があるわけではない。「無意識」はあるべきものがないことを説明する概念②人はメカニズムではない。人は自らの生を振り返ってみることができる。そこで立ち現れる体験は過去の因果を反映しているのではなく、さらなる生の一歩を指し示している③人は他者の体験を追体験しているから他者が話していることが「わかる」④人が体験を語るとき、体験・表現・理解の循環が観られる。このサイクルが回るごとに体験は深化していき、「体験過程」となる⑤人が自分の体験を新しく言い表したとき、違う過去が立ち上がってくる-の5つです。
 また、人の本質の現われとして現象をみると、「決定論」になってくる。その人のありようである現象こそ重要で、本質に先立つと述べました。
 参加者は、多くの刺激を受けたようです。
 このあと、池見さんは自ら開発した「アジア的フォーカシングメソッド」を紹介しました。マインドフルネスの「気づいておく」ことを中心したフォーカシングです。
 観想法、観我法、青空法を説明して、デモンストレーション。参加者がペアに分かれて練習しました。
 
 

星加さんのワークショップ充実

 「フォーカシングをイメージとトラウマに活用」する星加博之さんのワークショップが5月18、19両日、札幌市社会福祉総合センターで開かれました。

 初日はイメージが中心で、サカナになるフォーカシングと、フォーカシング透明人間を体験しました。星加さんの話では、イメージがどんどん移り変わる時はカラダの感じに戻ることが大切です。サカナのワークでは、まず、自分らしいサカナを探すときにフェルトセンス(なんとなく感じる、意味のあるカラダに感じ)を活用しました。サカナになった自分がイメージの中で出会う3人もそれぞれフェルトセンスが違います。ワークの後、ペアになった人が聴いて質問してくれたなかで、気づきが生まれ、気持ちの整理にもなりました。
 透明人間のワークは、困った場面で「透明人間になったらどんな感じがありますか」と問いかけます。「時間を動けるとしたら」「魔法を使えるとしたら」「相手を自由に動かせるとしたら」などとの質問もOKです。これは、2日目のトラウマのフォーカシングで役立ちました。
 初日の最後は「ポリフォセンス」。ある人や事柄についてさまざまの思いや感覚を描いていくワークです。ポリフォニー(2声以上の旋律が独立して進む音楽)とフェルトセンスをかけた造語です。まずは浮かんだ言葉を付箋に書きとめ、それらを色や形として表現しました。それぞれの感じを傾聴してもらうことで、自己理解が進みました。トラウマを抱えた人の場合はそれぞれの感じが別人格のように現れるそうです。
 2日目は、午前中、気がかりを思い浮かべなら粘土をこねました。ペアになって聴いてもらい、「自分の気持ちが変化した」などの感想がありました。
 次に、言葉をあまり使わずに、ペアで歩き、並び、手で肩や背中などに触れ、呼吸を合わせる「フェルトセンシング」のワークをしました。「カラダが温かくなった」「行き着くのが早かった」などの声が上がりました。
 最後がトラウマとの取り組みです。凍り付いていた時間を意味あるものにするフォーカシング指向心理療法で、星加さんは「カイロスフォーカシング」と名付けています。説明、デモンストレーション=写真下=のあと、困っていることや繰り返されるうまくいかないことについて話し、聴く3人1組のワークを体験しました。聞く側がまじめになりすぎず、「遊び心を忘れない」ことが大切だそう。「変身する」「透明人間になってみたら」「(ドラえもんの)どこでもドアがあるとしたら」…などの提案が、過去のイメージの再編に有効なことが確かめられました。イメージの中で今の自分が助けに行くこともできます。
 星加さんが語る、ご自身の体験は、説明をとてもわかりやすくしてくれました。 

「フォーカシング指向表現アーツ」好評

 「表現アートセラピー」とフォーカシングを統合した、フォーカシング指向表現アーツセラピー(FOAT®︎)のワークショップを2024年1月13,14の両日、札幌市社会福祉総合センターで開きました。講師は、北大学生相談総合センター講師兼カウンセラーの小坂淑子さんです。
 初日は、フォーカシングやFOAT®︎についての解説の後、動きや音、色などに少しずつ触れて、クレヨンや色鉛筆で描きました。「KOL-BE」(コルビー)という人型に自分の身体の感じをあらわし、自分にやさしく接する練習をしました。ペアになって、表現している人を見守りました。
 2日目は、アートを用いたフォーカシングプロセスの特徴について解説。平和で落ち着ける場所について表現して体験をシェアした後、アートを用いた「クリアリング・ア・スペース」という気がかりを置いておく方法を試しました。A4判の封筒を宝箱に見立てて、さまざまの素材で飾りつけし、その中に気がかりを書いた紙を入れました。

 ワークショップの写真と参加者の感想を以下に載せます。


・自分のことに集中できて良かったです。(30代女性)
・安心して取り組めました。先生の語りかけが心地良かったのと、アートを通して自分に触れるってやっぱり好きだなあと思いました。(同)
・感じたものを言葉にするだけではなく、素材を使って具現化できたことがとても新鮮で幸せな時間でした。(40代女性)
・コルビーでは、素材を感覚に合わせてすぐ変更できる自由さや手軽さを新鮮に体験できました。反対に、とりあえず置いてみたものを眺めることでからだの感覚が変化していき興味深かったです。2日目は安全性をとても実感できました。(同)
・自分の感じや他の方の作品と語りを見聞きすることを通して、「流れ」を感じることができ、そこに留まっておく必要もないし、必要であれば戻ってこれることを実感し、安心したのが収穫でした。(30代女性)
・参加者それぞれが異なるものを作っていて面白かったです。(60代女性)
・カウンセリングのようなことに興味ない普通の人が、こういった講座に来るようになったらいいなと思いました。(40代女性)
・自分がアートを苦手とするイメージが払拭され、五感を鍛えるのにもまた行いたい。(30代女性)
・自分自身の感覚をじっくり味わいながら、自分に優しくできる時間でした。(同)
・講師の理論やワークについての様々な説明は、本当に深く理解している人が自分の体験に落とし込んだ上で話されていることが伝わってきました。その説明を聞いているだけでもいろんな気づきが生じ、講師の豊かな才能と誠実さ、力の大きさを感じて尊敬の念と共に、学ぶところがたくさんありました。(50代女性)


過去のワークショップ年表

札幌フォーカシングプロジェクトがこれまで開いてきたワークショップを年表スタイルでまとめました。

  • 2001年4月 SFP結成(3月のアンの東京ワークショップ参加者の呼びかけ)
  • 2001年10月 大澤美枝子さんのワークショップ(ちえりあ)
  • 2002年10月 大澤美枝子さんのWS アドバンスト・リスニング(定山渓)
  • 2003年10月 大澤美枝子さんと村里忠之さんのWS エッジで考える(当別)
  • 2004年10月 大澤美枝子さんのWS やさしいインタラクティブ(かでる)
  • 2005年10月 日本フォーカシング協会コアメンバーの集い(小樽マリンヒルホテル)
  • 2006年2月 大澤美枝子さんのWS(エルプラザ)
  • 2006年10月 アン・ワイザーのWS すべてあるがままに・内側との関係(エルプラザ)
  • 2007年2月 天羽和子さんのWS 子どもとフォーカシング(リンケージ)
  • 2007年8月 前田満寿美さんと伊藤美枝子さんのインタラクティブ・フォーカシング・ワークショップ(北大遠友学舎)
  • 2007年10月 大澤美枝子さんのワークショップ TAE あなたの居場所、傾聴訓練(札幌コンベンションセンター)
  • 2008年3月 土井晶子さんのワークショップ「からだの感覚に開かれていくこと」(札幌市社会福祉総合センター)
  • 2008年10月 井上澄子さんの「からだほぐしからのフォーカシングワークショップ」(北海道真駒内青少年会館)
  • 2009年5月 第21回 国際フォーカシング会議 淡路島に5名参加 
  • 2009年8月 得丸さと子さんのTAEワークショップ(札幌市社会福祉総合センター)
  • 2010年1月 田村隆一さんの「夢のフォーカシング」ワークショップ(北大学術交流会館)
  • 2010年5月 土江正司さんの「フォーカシング・エンカウンター」ワークショップ(エルプラザ)
  • 2010年7月31日・8月1日 日笠摩子さんのフォーカシングワークショップ「フォーカサーに教えてもらう方法」(リンケージ、かでる)
  • 2011年4月 天羽和子さんの子どもとフォーカシングワークショップ(札幌市社会福祉総合センター)
  • 2011年7月 アン・ワイザーのワークショップ(フォーカシングとジェンドリン哲学を一緒に学ぼう・北大遠友学舎)
  • 2011年9月 吉良安之さんのセラピスト・フォーカシングワークショップ(北大遠友学舎)
  • 2012年5月 大澤美枝子さん、傾聴とフォーカシングの基本(帯広・十勝プラザ)
  • 2012年11月 日本フォーカシング協会フォーカサーの集いin札幌(北大学術交流会館)
  • 2013年4月 大澤美枝子さん、リスナー&ガイドの訓練プログラム(札幌市社会福祉総合センター)
  • 2013年11月 大澤美枝子さん、リスナー&ガイドの訓練その2、教育フォーカシング、公開スーパービジョン(札幌市社会福祉総合センター、札幌市リンケージプラザほか)
  • 2014年6月 池見陽さん、フォーカシングの源流と基本ワークショップ(かでる、札幌市社会福祉総合センター)
  • 2014年8月、得丸さと子さん、TAEワークショップ(札幌市社会福祉総合センター)
  • 2015年5月 森川友子さん、身体症状とフォーカシング(かでる)
  • 2015年9月 大澤美枝子さん、伝え返しで聴くからだをつくる(札幌市社会福祉総合センター)
  • 2016年3月 大竹直子さん、「自己表現ワークシート」を使ったワークショップ(かでる)
  • 2016年9月 諸富祥彦さん、インタラクティブフォーカシング(かでる)
  • 2017年7月 末武康弘さん、プロセスモデルと多元的セラピーのセミナー(かでる)
  • 2017年10月 堀尾直美さん、感情とニーズのポーカー、日精研ベーシックの圧縮版(かでる)
  • 2018年7月 堀尾直美さん、話し手に教えてもらう傾聴、カードやアートで感じて表現(かでる)
  • 2018年10月 村山正治さんの「私を語る」講演とビジョンワーク、PCAJIP(かでる)
  • 2019年6月 竹田悦子さんの「フォーカシングの基礎と産業メンタルヘルスへの応用」ワークショップ(かでる)
  • 2019年8月31日、9月1日 得丸智子さんの「TAE」ワークショップ(社会福祉総合センター)
  • 2019年10月 土江正司さんの「フォーカシング・サンガ」(社会福祉総合センター)
  • 2021年6月26日、27日 日本フォーカシング協会年次大会兼フォーカサーの集い@ズーム
  • 2022年10月9日、10日 矢野キエさんの「コラージュとフォーカシング」ワークショップ(かでる)
  • 2022年11月5日、6日 岡村心平さん「『問いかけ』からフォーカシングを学びほぐす」(かでる)
  • 2023年6月17日、18日 内田利広さんの「フォーカシング指向心理療法の基礎」ワークショップ(かでる)
  • 2023年9月9日、10日 酒井久実代さんと市川洋子さんの「インタラクティブ・フォーカシング」(社会福祉総合センター)
  • 2024年1月13日、14日 小坂淑子さんの「フォーカシング指向表現アーツ」(社会福祉総合センター)