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フォーカシング指向心理療法とは

「フォーカシング指向心理療法の基礎」のワークショップで、内田利広さんは型から入って型から出る柔道の練習にたとえて、わかりすい説明をしました。

 「来談者の生の動きに合わせて対応する」「柔道の試合のようなもので、フェルトセンスを感じたら背負って投げる」ー。6月16、17日に道民活動センターで開かれたフォーカシング指向心理療法のワークショップ。フォーカシングを知らないし、しようと思っていない来談者に対して、カウンセラーがどのような応答をするかを学びました。
 講師の内田利広さん(龍谷大教授)は九州大で村山正治さんのもとでフォーカシングと出会い、増井武士さんや神田橋條治さん、成田義弘さん、池見陽さんら名だたる心理療法家と交わり、研究を深めてきました。昨年、「フォーカシング指向心理療法の基礎」を出版しました。
 フェルトセンスは、ある問題についての漠とした、言葉にしがたい内的な気づきや身体的な感覚のことです。ここに目が向かないと、面接が進んでいない感じがします。
 内田さんは自らカウンセラーとしてかかわった例を提供しました。カウンセラーは、来談者の言うことをまず尊重します。大変な経験だったのに「平気でした」と語る場合も、「平気な訳ないじゃない」などと反論するのは愚の骨頂です。面接の中で信頼関係ができて、少しずつフェルトセンスに目を向けている中で、来談者が体験を言葉にすると、変わっていきます。
 来談者が自分のフェルトセンスにどのように触れようとしているかを「触知」という言葉で説明しました。来談者は自分の体験にあまり触れようとしないことも多いですが、その時は触れないことが大事で、無理に言葉にしなくてもいいそうす。来談者の見たくないものでも、カウンセラーが安心感をもってそこにいると、触れられることがあります。このような態度がカール・ロジャースの言う「傾聴」だそうです。
 来談者とカウンセラーのフェルトセンスは場の状況を含めたもので、基本的に共通していると説きました。来談者のフェルトセンスを促進しそうな時にはカウンセラーがその言葉を発してみます。「基本はそんなに伝えなくてもいい。これ以上近づかない方がいいと感じたら、『今日はそんなとこでいいでしょうか』と確かめる」と、内田さんは二人の間の川に「小石」を投げ込むかどうかの慎重な扱い方を、語りました。
 参加者がペアを組んでの実習も含め、実りの多い2日間だったようです。