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フォーカシングと脳神経科学 

 日本フォーカシングプロフェッショナル会主催の研修会が12月4日と5日、ズームで開かれ、英国のピーター・アフォードさんがフォーカシングと脳神経科学について話しました。
 ピーターさんは1984年からフォーカシングを学んできたセラピストです。人の脳のうち、左脳は意識や知覚の場、右脳はフォーカシングで私たちが「からだ」と言っているものや創造性があり、心理的な深い変化の場だと説明しました。ジェンドリンの哲学用語でいうと、左脳が「明在」でユニットモデル、右脳が「暗在」でプロセスモデルです。両方をつなぐ脳梁を行き来して、フォーカシングが進みます。右脳のフェルトセンスを左脳で言葉にするのに、左右二つの半球が同時に働くので、少し時間がかかると言います。
 フェルトセンスは右脳で生じ、全身の神経系から古い脳(皮質下部)を通して伝わってくる内受容感覚に基づきます。全体の状況を感じる、何が起こっているかという感覚です。形成されるものではなく、すでにそこにあるものです。
 右脳では、人と人が一緒にいると自然に起こる「共鳴」、手の動きや声の調子などの「調律」、相手の心を想像できる「心の理論」、この三つを合わせた「共感」が働きます。非言語的コミュニケーションです。
 フォーカサーは、リスナーによって右脳の混沌の世界を探求できます。リスナーがいた方が、つらい感情にも触れやすくなります。「本当に新しいことは右脳で生じる。右脳は暗在を明在にするために左脳を必要とする」と語りました。左脳が右脳を抑制することの方が多く、こうした左脳優位のクライエントには、散歩や芸術鑑賞など右脳を使う活動を勧めるそうです。
 ただ、これらは、ピーターさんの仮説であり、まだ、CTやMRIの画像で実証されてはいないそうです。

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池見陽さん、学会賞受賞講演

 関西大大学院教授の池見陽さんが9月5日、日本人間性心理学会の学会賞受賞記念講演をしました。「旅路に眺める心景色~道ゆく人々の間にて」と題し、ズームで一般公開されました。
 池見さんは、「無意識」を「お化けにようなもの」とたとえました。だれも見たことがないものを、あると仮定したことは、「現代文明にとってマイナス」と述べました。
 そもそも、人の体験は正確に言葉になっておらず、体験を言葉にしていく相互作用の中で追体験が生じてくると説明。「話し手と聴き手相互の追体験を語ることで深まっていく。体験ー表現ー理解という循環を通して、新しく見いだされた意味が過去を上書きしていく」と語りました。
 それが、池見さんの言う「推進された『だった』」です。それに気づかなかったのは、「無意識だった」という考え方は、説明の概念で、「もともと無意識があるわけではない」と、精神分析理論との違いを明らかにしました。
 演題の「旅」の次の駅は、マインドフルネスです。これを使った池見さん考案の「青空フォーカシング」では、自分に慈悲の言葉を贈ります。「多くの人は『みなさんが幸せで健やかにありますように』と言うけど、自分は頑張る。そうでなくて、『自分が幸せで健やかにありますように』と自分にコンパッション(同情心)を贈る」という勧めは、他者援助にかかわる人に大切かもしれません。

講演の動画が公開されました。下記からご覧になれます。

https://www.2021jhpc.org/memorial2021/


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「知の伝承」村山正治さん

 日本人間性心理学会は第40回記念大会の記念企画として「知の伝承」と題し、これまで人間性心理学を牽引してきた名誉会員6人へのインタビュー動画を公開しました。このうち、村山正治さんが「一人一人が自分を大事にして、人とつながる」ことを強調したことが、胸に響いてきました。
 「自分はこれで役に立てるよね」と言って、できないことは人にやってもらう。それがネットワークだというのです。村山さんは、問題解決ではなく、何かが生まれてくるまで待つ、というカール・ロジャーズの影響を受けました。それには安心して自分を向き合える場が必要です。「一人一人を大事にしていく世界をつくりたい。コミュニティという感覚が大事。みんなで作っていくんだという場を社会につくるファシリテーターになる」と話していました。
写真は2018年10月、「私を語る」の講演とビジョンワーク、PCAJIP(ピカジップ)のワークショップで札幌にいらした際に撮影しました。