札幌フォーカシングプロジェクトのホームページの「ちょっと俳句ing」主宰者・泉屋昌平さんの作品が3月5日、NHKEテレの「NHK俳句」の入選作として紹介されました。
「凧合戦 首の痛みを あとまわし」です。泉屋さんはNHKでこれまで佳作には入っていましたが、入選作になったのは初めて。
NHK俳句は全国から寄せられた投稿句の中から優れた作品を各週の選者が選び、入選句として作者名とともに紹介しています。
今回の選者は高柳克弘さんで、お題は春の季語「凧(たこ)」でした。
高柳さんは泉屋さんの作品を「凧が一番の優先事項だという気迫が伝わってくる」と評しました。ゲストで、ドラマ「相棒」などに出演する俳優の鈴木砂羽さんは「共感しかない」と話しました。
だれもが共感できる作品という点では、フォーカシングと相通じるものがありそうですね。
泉屋さんは道新文化センターのフォーカシング入門講座の中でも、フォーカシング的な俳句について指導をしています。
内田さんのワークショップ6月17、18日
龍谷大教授で、日本フォーカシング協会前会長の内田利広さんを招いたワークショップを6月17、18日にかでる27、540会議室で開きます。
初日は午後、2日目は午前と午後です。内田さんは京都教育大で長く教えて、退官後、龍谷大に移りました。フォーカシング指向心理療法や教育相談の研究でも知られています。詳しくは以下のページをご参考に。
【俳 句】冬のお題を公開
ついうっかりしていて(前回もでした)、更新し損なっていましたが、2023年3月5日までの期間を、冬に充てますね。
NHK俳句12月号が店頭に並んでいますが、なんと佳作に2点入りました。2022年はこれで6回目の採用となります(いずれも佳作)。2つというのは自分には滅多にないことでありまして、これで気持ちよく年を越せるように感じました。
ヴォーカルの個人レッスンを始めて3カ月目になりました。月2回で1回あたり45分、ストレッチや発声練習と、先生と相談して決める課題曲の練習とが半々の構成です。ちなみに今取り組んでいる課題曲は、玉置浩二さんの「メロディ」。普及版とギター弾き語り版と2種類やってます。玉置さんはすさまじい表現力を持っていることを実感!来年からはスティービー・ワンダーや、ひょっとするとホイットニー・ヒューストンなんかもやるかもしれません。楽しみでワクワクしています。
寒さ厳しき折柄、身も心もご健康に留意なさりつつ、新しい日々を重ねてまいりましょう。
「問いかけ」からフォーカシングを学びほぐす、と題した岡村心平さんのワークショップが5、6の両日、札幌の道民活動センターかでる27で開かれました。
これまで、「フォーカシングでは傾聴はするけど、質問をしてはいけない」、と何となく思っていた参加者には、新鮮な内容だったようです。
言葉にならない身体感覚(フェルトセンス)を感じ、何かにたとえたあと、質問すると効果的だと学びました。たとえたもの(メタファ)と掛けて、今の私の状況と解く、その心は…と「なぞかけ」の形にあてはめると、新鮮な何かが出てくることを体験しました。これは、伝え返しだけでプロセスが進まなくなったときに有効です。なぞかけでなくても、「最悪の部分は」とか「何が起きたら楽になるか」などさまざまな質問をすることで、言葉(メタファ)と実感(フェルトセンス)が交差すれば進展するそうです。
今回のワークショップを機に、札幌フォーカシングプロジェクトの例会でも、質問を練習してみたり、どんな質問がいいか迷ったときにはフォーカサーに聴いたりする人が出てくるでしょう。大きな転機になりそうな2日間でした。
煩悩とフェルトセンスについて
9月に沖縄で開かれたフォーカサーの集いで、フォーカシングプロジェクトが「ジェンドリン哲学や仏教を体験的に語り合おう~煩悩とフェルトセンス」という出店を開きました。講師を務めた岡村心平さんと仁田公子さんの話した内容が、ユーチューブで公開されたのを機に紹介します。
岡村さんによると、フォーカシングが、なぜ身体感覚(フェルトセンス)を大事にするかというと、身体はどんなふうになったらいいかを知っているからです。フェルトセンスは、自分がどうなったらいいかを知っている、謎めいた存在です。
環境と相互作用している身体は、環境を含意しているとジェンドリンは言います。含意の仕方は同時的なものだけでなく、まだ生じていない出来事も含みます。空腹は、食べ物の探索を含意し、食べ物の発見は摂食を含意しています。含意へと向かって生起するという方向性を伴い、含意に向かって生起した出来事は、食べると空腹感がなくなるように、含意自体を変化させます。こうした機能的円環の中で、フェルトセンスが存在するということは、何らの身体のプロセスの停止、欠如、何かが足りない(未完了)ということです。
身体は未来において生じうる生起を「予感」していると、岡村さんは語りました。実際に幸せか満ち足りているかどかではなくて、「幸せの予感」があるかどうかで幸せは決まるのではないか、とも話しました。
仁田さんは、煩悩とは、わずらいや悩むことなどと説明。生きていると避けられないものですが、「悟りへの入り口になる」と述べました。子を亡くした母親が仏陀に子を生き返らせる薬を求めたところ、死人の出たことのない家でもらいなさいと言われました。訪ね歩いた結果、どの家でも死んだ人の方が生きている人より多いと知り、救われます。仁田さんは「フェルトセンスも煩悩もきっかけになるものだから、人生は面白い。どんなに人生が苦しくても大変でも引き返したり、逃げたりしないで、それを体験し続けることで、硬くて重たいこころの扉が開き、別に地平が広がるきっかけになる」と投げかけました。
俳句<秋>のお題を公開しました(遅!)
ついうっかりしていて、更新し損なっていましたが、12月4日までの期間を、秋に充てますね。
沖縄での「集い」では、「俳句で交差〜フォーカシング的に俳句を作る」と題して、出店を開きました。11人ご参加いただき、そこそこ楽しんでいただけたようでした。
これから急に気温が低下するようです。次第に環境適応力が衰えてくるのを感じますが、不思議と意欲は衰えを知らず、近々ヴォーカルの個人レッスンを始めようかと準備しています。幾つになっても、何かを始めることはできるんだと思います。
少しは、座右の銘「明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学べ」に近づいているかなぁ?
「問いかけ」ワークショップ
「問いかけ」からフォーカシングを学びほぐす
~なぞかけ、禅問答、創造性~
フォーカシングの創始者ジェンドリンは簡便法(6ステップ)の5段階に「尋ねる」(asking )を入れています。フォーカシングでは傾聴の練習をしますが、質問には難しさを感じる人が少なくないでしょう。今回は問いかけを中心として、フォーカシングを「学びほぐす」内容です。フォーカシングの初心者にはむろん、よくご存知の方々にも、新鮮な学びの機会になっていただけるでしょう。
◇日程、内容
2022年11月5日(土)、6日(日)
▼5日は午後2時スタート、5時半まで
前半 講義:フォーカシングのステップになぜ「アスキング」があるのか
ジェンドリン哲学の“交差”との関係
後半 なぞかけフォーカシングのデモセッションをいくつかor相互セッション
▼6日は午前9時半から午後4時半まで
セッション(アスキングの機能を生かせるワーク)
なぞかけや禅問答の講義、ミニセッションや長めの質疑応答
アスキングを生かすための体験過程流シェアリング
◇会場 道民活動センターかでる27(札幌市中央区北2条西7丁目)10階1060会議室
◇コロナ感染防止のため、オンライン(ズーム)でも同時開催し、対面とオンラインのどちらかを選べます。オンラインを申し込まれた方に後日、URLをお知らせします。
◇講師 岡村心平(おかむら しんぺい)
神戸学院大学心理学部講師、臨床心理士、公認心理師、TIFI(国際フォーカシング研究所)認定フォーカシング・トレーナー、日本人間性心理学会理事
◇参加費 2日間で5000円、どちらか1日のみ3000円、日本フォーカシング協会メンバーはそれぞれ4800円、2800円
◇申し込み方法 こくちーずでお申し込みください。以下のURLです。
https://kokc.jp/e/d1bf790a77543ba92b106c874f8b4824/
こくちーずを使えなかった方は、氏名と電話番号、参加日、フォーカシング協会メンバーかどうか、オンラインかリアル参加かを書いたメールを info@sapporo-focusing.org にお送りください。
◇申し込み締め切り 10月29日(土)
「フォーカシング指向心理療法の基礎」出版
龍谷大教授で、日本フォーカシング協会前会長の内田利広さんが、「フォーカシング心理療法の基礎 カウンセリングの場におけるフェルトセンスの活用」と題した著書を創元社から出版しました。
この本は、フォーカシング指向心理療法について、日本語で詳細かつ丁寧に、長年の研究成果を含めて書き起こした、刺激に富む一冊です。内田さんが、九州大で村山正治さんや増井武士さんからフォーカシングを学び、池見陽さんや神田橋條治さん、成田善弘さんの影響も受けながら、同療法の理解を深め、実践を積んできた成果をまとめました。
その全体を要約するのは私の身に余るので、付箋をつけた箇所の一部を拾い読み的に紹介します。
内田さんはフェルトセンスに意識を向け、やさしく触れる感覚を日本語で「触知」と名付けました。セラピスト自身がクライエントの体験の中に流れている感覚(フェルトセンス)を繊細に感じており、クライエントが今まさにこのフェルトセンスとどのような関わりを持とうとしているか(あるいは持たないようにしているかを含めて)を触知することが「相手の身になる」ということであり、これがフォーカシング指向心理療法における共感である、と言います。
クライエントのフェルトセンスないし、それへの触知の状況を感じとるには、「その面接場面におけるセラピスト自身のフェルトセンスを触知することが重要な意味を持つ」。これは、セラピストの”腑に落ちる”、”納得できる”という感覚で、セラピスト自身のフェルトセンスとの相互作用から生じてくるものである、と説きます。
面接現場におけるクライエントとセラピストのフェルトセンスは別ものではなく、常につながっている共有性があるとみることが、こうした考えのベースにあります。
税込み2860円。創元社は出版記念のオンライン講座「臨床現場におけるフェルトセンスの活用を語る」を8月21日(日)に開きます。チラシを添付します。
若手の発表で活気 日本ジェンドリン学会
5月5日に開かれた第5回日本ジェンドリン学会は、若手研究者らが、ジェンドリンの思考を日常生活や教育現場に取り入れる発表をしたことで活気づき、将来の課題がくっきりとしてきました。
この学会は正式な学会というより、研究者が自由に語り合う雰囲気の場です。学会の10周年にあたる今年は5月5日にオンラインのズームで開かれ、4時間あまりの論議がユーチューブに公開されています。
村里忠之さん(学会長)と末武康弘さん、得丸智子さんが、ジェンドリンの主著「プロセスモデル」を引用し、言語化以前の暗在的な身体感覚(the Implicit)と、言語との応答・交差を軸に発表しました。
若手研究者の岡村心平さんは、「なぞかけフォーカシング」を実例にジェンドリンの思考論を展開しました。1人でこの暗在的な身体感覚にアクセスできるのかという観点から、職場の状況を、あるもの(A)にたとえ、「A とかけて今の職場と解く。その心は」となぞかけをした結果、腑に落ちる答えが出てきた体験を語りました。
もう一人の若手、古井戸祐樹さんは、教育現場で普及しているデューイの理論とジェンドリンの理論の類似性を説き、総合的な学習の時間をより創造的にするために、フォーカシングが役立つ可能性を示しました。
その後、「ジェンドリンの哲学が難しく遠いものであってはいけない。社会と離れない形で発展させていくことが重要。教育の世界に広めていければ、より多くの人が幸せになる。個人の生の経験と普遍の両方が大事」などと話し合いました。
「内側より現実を」仏教心理学者に聞く
英国人の仏教心理学者で心理療法家のデイビッド・ブレイジャーさんが4月15日、オンラインで講話しました。参加した池見陽さん(関西大大学院教授)が「仏教を勉強してきて面接の仕方がどう変わったか」と尋ねました。
ブレイジャーさんは、米国人の心理学者カール・ロジャーズに晩年会ったエピソードを語りました。ロジャーズは「モデリングの影響を過小評価していた。クライエントがセラピストのまねをして、(ロジャーズがカウンセラーの必須条件とした)3条件をいつの間にか身につけていた」というのです。
本来、クライエントは自然の流れのままでいいはず。西洋の心理療法では、クライエントがある人や人間関係を語り始めたとき、セラピストはたいがい「あなたはどう感じますか」などと、内面に注意を向けるような質問をするので、内側にとらわれてしまうと、ブレイジャーさんは言います。
そこにいかず、「その人は何歳ですか」などと聴き、クライエントのイメージ(色=ルーパ)を直視するようになったそうです。色は、自分の心というフィルターを通してみたイメージです。自分の心を表しており、現実をしっかり見ていくことで、自分全体が変わっていく時があると、語りました。このことを「色にはより深い真実(法=ダルマ)が含まれている」と仏教用語を使って説明しました。
池見さんは「人は状況の中にあるものとして世界にかかわっている。心は『世界内存在』になっていく過程のことで、人の内側にあるものではない。ジェンドリンも、フォーカシングは『精神内界』を見ることではない、と言っている」と共鳴していました。
この講話は日本フォーカシング協会国際交流グループが海外からゲストを招いて開いているズーム会議の中で行われました。